経皮的椎体形成術

経皮的椎体形成術とは

どんな人でも、年を取ってくると徐々に、多かれ少なかれ、骨が弱くなってきます。
その中でも、若年成人平均の骨量の70%未満になった方、または脆弱性骨折(椎体骨折、大腿骨近位部骨折)がある方を骨粗鬆症と診断します。
骨粗鬆症で起こる、骨折で最も多いのが、椎体骨折です。椎体骨折は圧迫骨折と呼ぶこともあります。
椎体骨折は脊椎の骨が脆弱化することにより、容易につぶれてしまう骨折です。多くは転倒や尻餅をつくことで発生しますが、知らず知らずのうちにつぶれていることもあります。また、重い物を持ったときに発生することもあります。
椎体骨折をおこすと、通常は立っていられない様な非常に強い痛みが出現しますが、長く続くやや強い腰痛と感じる事もあります。
診断はレントゲン撮影にて行いますが、MRI撮影を行わないと分からないこともあります。
骨折の形態は様々ですが、体の前の方の骨がつぶれやすく、椎体骨折後に腰が丸まってしまうことがあります。
治療の基本は安静です。約6週間程コルセットを着けて、骨が癒合するのを待ちます。あまり変形を残さず、癒合する場合もありますが、変形を残したまま癒合することもあります。また、骨折した部位が癒合しないで、ぐらぐらしたままになってしまうこともあります。


骨癒合が起これば、痛みは改善しますが、変形が残った場合は、背中が曲がったままになってしまうこともあります。
経皮的椎体形成術は、十分な保存療法を行っても、骨折部の骨が癒合せず、脊柱の変形や痛みが改善しない場合に行われます。
従来の椎体形成術は、大きく切開をして、スクリューで椎体を固定するなど、大きな侵襲の手術でした。
しかし、経皮的椎体形成術では5mmの切開が2箇所で済むために、非常に低侵襲な手術となっており、椎体骨折を起こしやすい高齢者に適した手術方法です。
手術は全身麻酔下に行われます。背中に5mmの切開を2箇所行い、神経に当たらないように、注意しながら、椎体前方に器具を挿入します。圧迫骨折の部位に到達してから、バルーンを膨らませ、椎体の矯正を行います。その上で、骨セメントを注入し、硬化を待ちます。皮膚を縫合して終了します。
翌日より、歩行可能となります。コルセットは新たな圧迫骨折の防止のため、6週間程装着します。骨セメントは術中に硬化していますので、麻酔が覚めた時点で、圧迫骨折の痛みはすでに消失しており、翌日から歩行できるようになります。(ページの下の方にビデオを用意しました。ご参照ください。)

とてもシンプルな方法ですが、危ない面もあります。まず、神経の近くをかすめて、器具を挿入する必要があること、骨セメントを適切な位置に、適切な堅さで入れないと、脊柱管内や、腹腔内に骨セメントが漏れ出したり、肺塞栓を起こす可能性があることなどが挙げられます。
そのため、日本脊椎脊髄病学会認定の脊椎外科指導医で、専用のトレーニングを受け、かつ試験に合格した医師だけが施行できる手術となっています。
もちろん、わきだ整形外科楊 昌樹はすでに認定を受けています。
経皮的椎体形成術は、これまで自由診療や先進医療として行なわれてきた手術ですが、安全性と有効性がさらに高まったことが認められ、平成24年4月より保険適応となりました。
椎体骨折を起こして、なかなか痛みが改善しない患者さんは一度、わきだ整形外科受診をしてみてはいかがでしょうか。つらい腰痛から、解放される可能性があります。


経皮的椎体形成術を受けられる際は、認定トレーニングを受けた医師から、手術を受けられることをお勧めいたします。